のどぐろパート Moo!Movie!

映画に飲み込まれた迷い主

『インサイド・ヘッド』感想 ビンボンとトイストーリーの類似性”ビンボン、ありがとう” ネタバレあり

このエントリーをはてなブックマークに追加

映画『インサイド・ヘッド』 ”ビンボン特集”

映画『インサイド・ヘッド』の感想として、少女ライリーの小さい頃の空想上のお友達である”ビンボン”の活躍をまとめつつ、トイストーリーと絡めていかにビンボンが魅力的なキャラクターかということを書き綴ってみました!

 

f:id:nodogurokun:20150721093848j:plain

 
 成長とともに消えていった”友達”

 

3歳のころ、動物にはまっていたライリーが大好きな動物を掛け合わせて創り出した“空想上のともだち”。見た目は猫や象で綿あめのような肌感、さらに鳴き声はイルカで、涙はキャラメル味のキャンディ。ヨロコビ、カナシミが、頭の中の司令部から放り出された先で出会う

ビンボン|インサイド・ヘッド|映画|ディズニー

 

 

 

この作品の最大の魅力的キャラクターは間違いなく”ビンボン”でしょう。

f:id:nodogurokun:20150721221406j:plain

 

ビンボンって?

ビンボンが初めて登場するのはヨロコビとカナシミが司令室から飛び出してしまった後、道に迷っているシーンです。

その後ビンボンのおかげでヨロコビとカナシミは司令室までの行き方を知ることが出来たんですけど、単に道案内キャラクターとしてビンボンがいるわけではなく作品のメッセージ性を深めるかなり重要なキャラクターとして描かれています。

そもそもヨロコビたちに出会うまでビンボンって何してたの?ってことですが、ビンボンは直前までライリーの幸せな思い出を底なし袋に集めていました。

ビンボンは寂しかったのです。ライリーに相手にされなくなり他の感情たちにも忘れ去られ一人ぼっちで長期記憶の保管場所で長年漂ってたんですから。

そんな時にいきなりヨロコビが現れたものだから、怖がってしまって逃げてしまいます。

ビンボンはライリーの小さい頃のお友達。それだから行動も小さい子供と同じようです。

ライリーに完全に忘れ去られたくないため寂しい思いをしているビンボンですが、ヨロコビと出会い「司令室に戻れたらライリーにビンボンのことを思い出させてあげる」というヨロコビの言葉によって元気を取り戻します。

しかし、ビンボンって先ほど述べたように子供っぽいところがあってなかなか上手く二人を案内できないんですよね。立ち入り禁止の場所に入ってしまうし。

そんな中彼はとんでもない光景を目にしてしまいます。ライリーと一緒に遊ぶのに使ったロケットがもう不要なものだと記憶のごみ箱に捨てられてしまっているのです。

「これじゃあライリーを月に連れていけない・・・」

今までの淋しさが溢れるようにビンボンは涙してしまいます。ここでカナシミが自分の能力を発揮するわけなんですけど

このようにビンボンの「まだライリーと遊びたい。ライリーのためになりたい」という気持ちとは裏腹にライリーの心からビンボンが”不要”な存在となっていることが描かれています。

 

それがより明確に描かれるようになったのが記憶のごみ捨て場に落ちてしまったシーンです。ライリーの家族の島が崩壊した時に、ヨロコビを助けようとしたビンボンは不要な記憶のたまり場に落ちてしまいます。

そこでビンボンは気づくことになります。自分の体が少しづつ消えていて永遠にいなくなる間際にいることを。

それでもビンボンはライリーのために行動するんですよね。なんとしてもライリーを助けるためにビンボンのロケットでもとの場所に戻ろうとヨロコビと協力します。

けれども、ロケットはもう一歩のところで失速して落ちてしまいます。そこでビンボンは自分の消えゆく体を見て決めるんですよね。ロケットの重さを軽くするために自分が途中で降りようと。

そうしてヨロコビは地上に戻ることに成功します。ビンボンは一人ゴミ山に残って最後までライリーのことを思うのです・・・・・

f:id:nodogurokun:20150722030826j:plain

全私が泣いた。

 

 

 

トイストーリーとの類似性

それで、ビンボンのどんなところに惹かれるのかなと思ったらやっぱりそれってビンボンがライリーに忘れ去られているのにライリーにもう一度自分を必要として欲しいと思っているところなんですよね。それに強烈に胸が締め付けられるのです。

「あれ?そういえばこの気持ちって何かを見た時と似てるな」と思ったんですけど、そうですピクサーの名作「トイストーリ―」と似てるんです。

 

英語の記事ですが、ビンボンとトイストーリーについて書かれているものを見つけました!

(今回の記事はこちらのものをほぼ参考にしています)

Bing Bong's overall fate is very similar to what Woody narrowly avoided in Toy Story 3, both literally and figuratively. Literally in the sense that Bing Bong disintegrates into nothing in a heap after falling in to the Memory Dump, similar to how Woody avoided the incinerator's firey core. Figuratively in the sense that Bing Bong is no longer needed due to the child outgrowing him, similar to Woody's fears through Toy Story 3, and a subconscious fear through most of the Toy Story franchise.

Bing Bong - Disney Wiki

 

こちらに書いていることをまとめると・・・

  • ビンボンの運命はトイストーリー3でウッディがかろうじて回避することのできたことと似ている
  • ビンボンが記憶のごみ捨て場で消えていく描写は、トイストーリー3でウッディが焼却炉の中で消えてしまいそうになる描写と似ている
  • ビンボンが子供の成長によって不要になることはウッディがトイストーリー3でずっと恐れていたこと、またトイストーリーシリーズのほとんどで潜在的に恐れていたことと似ている

 ここからウッディとビンボンの恐れやその描写の仕方がかなり類似しているということがわかります。焼却炉のシーンと記憶のごみ捨て場のシーンとの重なりにはなるほどなと思いました。

 

この二つのキャラクターの恐れはなんといっても自分の持ち主から忘れさられることです。でも成長して大人になってからも相変わらずおもちゃと遊んでいたり、空想上の友達と遊ぶのはなかなかきついですよね。ありえないって。

そう、彼らの姿に胸が苦しめられる理由の一つは見ている人がまぎれもなくもう彼らを不要だと思ってしまっているからでしょう。

それなのに、彼らは見捨てないでくれと健気に頑張っている姿に感情移入をすることでどうしてもいたたまれない気持ちになってしまいます。

そして同時に、二つ目の理由として彼らに感情移入をするのではなく自分自身に気持ちを向けた時に、”昔あった心がなくなっていること”それ自体に寂しさを覚えるという理由があるでしょう。

過去を思いその時あったものがないことに気づくと成長や時の流れを感じると共になぜか切ない気持ちになることってないでしょうか。

 

”成長とともに消えていった存在”

ビンボンとウッディは同じような恐れを抱えていますが、ビンボンの場合は本当にその恐れが現実となってしまうからこそ余計に辛い。

ビンボンがあの暗いゴミ山の中でひっそりと消えたことを想像するとカナシミが私の感情コントロールを支配しにくることは必至です。

そして、最も「ああ・・・」と思ったのはライリーが元気になって成長してからビンボンのことはなかったことのように描かれていることです。

「尺の問題だから(マジレス)」とかそんな理由はどうでもよくて、ヨロコビもカナシミも何も気にしないことの方がむしろ自然だと感じることに切なさを感じるのです。

ヨロコビに心配かけまいと振る舞ったビンボンは本当いいやつで、彼が消えることは本当悲しいけれど、成長するということを考えると仕方ないと思ってしまう。そう自分自身が思ってしまうことに寂しさを感じるんですよね。

 

これが成長。「インサイド・ヘッド」というライリーの成長物語は、足し引きの成長の二面性を描写しているからこそ大人の心を動かすのでしょう。

ビンボンは何も成長と共に忘れ去られる存在という理由だけで魅力的というわけではなく、見た目とか子供っぽいのに心から相手を思いやれるところとかたくさん魅力が詰まったキャラクターです。

ピクサー映画史に残る名キャラクターになることは間違いないと思ってます。

ちなみに、ピクサー映画では初めて殺しをやったキャラクターだったり(雲を触れることで消してしまった)歴代二番目に消滅してしまったキャラクター(初代はカーズのドック・ハドソン)なので、結構本当に目立ったキャラではあるよう。

まあどんな形であれ、ビンボンというきっと誰の心の中にもいた存在を映画を通して見た人が少しでも思えたことがビンボンの喜びにつながると思うのです。

そう、思うのは少しでいいんだと思います。散々悲しい切ないとは言いましたけど、ビンボンから卒業し成長したことで今の自分がある。

決してビンボンは誰にとってもマイナスに過去へと引っ張る存在ではなくて、自分自身の成長を後押しするような存在であると思うのです。

 

ビンボン、ありがとう。

 

 

 

 

 インサイド・ヘッド関連記事

nodogurokun.hatenablog.com

 

nodogurokun.hatenablog.com

 

 

作品感想です。

nodogurokun.hatenablog.com