『ヴィンセントが教えてくれたこと』感想”大号泣。人生なんて報われないことばかりだ”
映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』を見た感想をネタバレなしで書いてます。北米でわずか4館の限定公開でスタートしたにも関わらず2500スクリーンに拡大しゴールデン・グローブ賞にノミネートされた本作。ちょっとした生きる活力をくれる心揺さぶられる号泣ムービーでした。
リリース情報
日本公開日:2015年9月4日
簡易感想
私的好き度:★★★★☆
笑える:★★★☆☆
泣ける:★★★★★
怖い:☆☆☆☆☆
スカッとする:★★☆☆☆
ドキドキする:☆☆☆☆☆
心があったまる:★★★☆☆
憂鬱になる:☆☆☆☆☆
映画感想
人生は報われないこと続きでも無価値ではない。それを認めてくれるのが他者である。
『一度でいいから勝て!』そんな台詞が映画の中で印象的でした。
人生は大抵上手くいかないものだと知ってしまった人間は、諦めと希望を混合させながらこう思うのでしょう。
願っては裏切られ、願っては裏切られを繰り返し、天文学的な確率でやっと希望を手に入れる。そしてまた何度も裏切られ続けるのが人生だと言っても過言ではないのかもしれない。そのようにまだ20代である私自身も薄々感じる今日この頃です。
この映画の主人公”ヴィンセント”の人生もろくでもないものです。一人で暮らし、酒にたばこにギャンブル。おまけに売春婦を雇い盗みもする。そんな普通の人のろくでもない人生にさらに磨きをかけた人生を経験したような日々を彼は送っています。
そんな彼の人生が隣に引っ越してきた少年”オリバー”との出会いをきっかけに輝きだす。私は彼の人生をみてスカッとした気分になれました。
しかしこれはそんな甘い映画ではありません。願いが裏切られ続けるという人生を現実的に描いた作品なのです。
彼の人生がまたいつものようにろくでもないものになってしまった時、「やっぱりそうだよね、上手くいかないものだよね」と慣れてしまった哀しさを感じてしまいました。
観ている大抵の平凡な方々の多くはこのようにヴィンセントと同じく心を上下に揺さぶられてしまうかもしれません。
じゃあただそんな人生をそのまま映画にしたのかというと決してそうではない。
この映画が言いたいのはきっと、頑張っても報われないこと続きの人生だけどもだからと言って決して無価値なものではないし、やはり希望はあるのだ。ということだと思います。
ヴィンセントは物語の途中にオリバーに「俺をマネるな」「しっかり生きろ」と言いますが、じゃあ果たして彼の人生は彼の言うように人に誇れるものではないのでしょうか。
夫に浮気された挙句、親権まで取られそうになっているオリバーの母親の人生は?
売春婦としてお腹にいる赤ん坊のために働くロシア人の女の人生は?
一見ろくでもない人生ではあるけれども、そんな人生に揉まれながらも真摯に生きている。報われないからと言ってそんな彼らの頑張りが無価値だと言えるのでしょうか。
しかしながら平凡な私たちは、自分の人生やそんな人生を送ってどうしようもなくなっている自分自身を無価値だと思ってしまうものです。だからこそ「そんなことはない」と自分を認めてくれる他者が必要なのでしょう。
そう、この映画が訴えかけることは自分を認めてくれる他者との繋がりの大切さです。報われないこと続きの人生を送る人間は、表面的ではなくしっかり内側まで自分を見て認めてくれる存在が必要なのです
「認められる」ということがどれだけ生きる活力となることか。
この映画を見て一般の人が心を揺さぶられるのは、この映画が我々のような人生を認めてくれる作品であるからです。
ヴィンセントや売春婦、オリバーの母親に共感し、観終わった後に心が浄化されるような感覚を持った人はきっと努力をしたことがある人でしょう。そしてその努力が報われなかった人です。人のために尽くしたのに報われなかった人です。人生は上手くいかないものだと知ってしまった人です。
しかしながら確かに人生に希望を持つことをほとんどやめてしまったけれども、そんな人生を認めて欲しいという思いは誰しもあるのではないでしょうか。
そんな思いを満たして確かにある希望を映し出す。この映画は見ている人に「ろくでもないけれどまた頑張ってみるか」と思わせ、生きる活力を与えてくれる映画なのです。
あらすじ
アルコールとギャンブルを愛する、嫌われ者の偏屈親父ヴィンセントは、隣に引っ越してきたシングルマザーのマギーから、彼女の仕事中に12歳の息子オリ バーの面倒を見るよう頼まれてしまう。嫌々ながらも引き受けたヴィンセントは、行きつけのバーや競馬場にオリバーを連れて行き、バーでの注文方法からいじめっ子の鼻のへし折り方まで、ろくでもないことばかりを彼に教え込んでいく。オリバーはそんなヴィンセントと反発しあいながらも、一緒に過ごすうちに彼の 隠された優しさや心の傷に気づいていく。http://eiga.com/movie/81272/
じじい”ヴィンセント”と少年”オリバー”の交流
この映画の魅力は何かと聞かれれば、心に響くメッセージ性とじじいと少年の交流と言いますね。それほどにビル・マーレイ演じるヴィンセントと少年オリバーの交流は本作で輝きを放っていました。
関係を持った経緯などは上記のあらすじを読んでいただければわかると思いますが、こういう年齢差のある関係のいいところは異なった視点を持っているからこそ気づきを与え合えるということですよね。
例えば『アバウトアボーイ』なんかもその良さを発揮している映画です。
ちなみにこのオリバー役を務めたのが、ジェイデン・リーベラという少年。
▼以下プロフィール
アメリカ合衆国ペンシルベニア州南東部にあるフィラデルフィア生まれ
2003年生まれで現在(2015年)は12歳
9歳の時に"Playing it Cool"という映画にてクリス・エヴァンスの子供時代を演じ映画デビュー。
その後2013年に『ヴィンセントが教えてくれたこと』でオリバー役として初めて大役を務める。
彼、可愛すぎますよね。個人的に低い声と小柄な体格のギャップが魅力的だと思いました。どこかの俳優のようにおちぶれることなく綺麗に成長することを願ってます。
▼インタビュー記事!
最後に
この映画は心揺さぶられるドラマ性に加え、台詞などにコメディな要素も多く含まれていて笑える映画でもあります。登場する子猫や、脇を飾るナオミ・ワッツのパンチラなど魅力は盛りだくさん。
オリバーがヴィンセントから教わったこと。それは単にいじめっ子に打ち勝つことだけではないのです。オリバーがヴィンセントを通して見つけたことは何なのか、それに注目してみるといいと思います。