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映画に飲み込まれた迷い主

『マイ・インターン』感想”プラダの続編ではないけど同じくらいお気に入りの映画になりそうな予感”

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映画 『マイ・インターン』を見た感想をネタバレなしで書いてます。『プラダを着た悪魔』の続編!?なんて噂もありますが、決して繋がっている作品ではありません。お洒落な服が出てくる派手な映画ではなく、地味ではあるけどもっと心に訴えかけてくる強いメッセージ性を持った作品でした。”現代を描いた映画”そんな視点から感想を述べようと思います。

リリース情報

日本公開日:2015年10月10日

簡易感想

私的好き度:★★★★☆

笑える:★★★☆☆

泣ける:★★☆☆☆

怖い:☆☆☆☆☆

スカッとする:★★☆☆☆

ドキドキする:☆☆☆☆☆

心があったまる:★★★★☆

憂鬱になる:☆☆☆☆☆

 

映画感想

新しいモノと古いモノが対等に並ぶ現代をイキイキと描いた人間ドラマ

この作品はベンチャー企業の社長として日々奮闘している女性(アン・ハサウェイ)と、その会社のインターンとしてやって来た40歳も年上の男性(ロバート・デニーロ)の交流を描いた作品です。『ホリデイ』など恋愛映画を得意とするナンシー・マイヤーズが監督で、女性の目線で描いた作品らしく女性の生き方をテーマとしたメッセージが込められた作品になっていました。

しかしながら、”女性が性別にとらわれず自分らしく生きる”なんてテーマだけじゃ現代じゃ在り来たり。それが見ている人にウケるのはわかりますが、既視感を抱いてしまうものです。

でも別にそれだけがテーマの映画ではないんですよね。さっき説明したようにこの映画は主人公が二人いて、一人は社長として働く”ジュールズ”という女性。そしてもう一人はシニア・インターンとして働く”ベン”という男性です。

この70歳のベンという男性。彼の存在こそこの映画からそんな既視感を払拭してくれているのです。

いわばベンという存在は女性の味方でしょう。女性が自分を犠牲にすることなく好きに生きるためには女性の共感だけではなく男性の理解も必要です。まさにベンという男性は女性を尊重し、さらに女性の人生の背中を押してくれるような人間なんですよね。

そしてこのベンという男性が70歳という高齢者であることがこの映画に新しい風を吹かせている一つの要素なのでは?と考えます。

というのも昔と違い女性の社会進出が当たり前だと認識されている現代ですが、今の社会でそんな変化に理解のある男性って比較的若い人であると思います。価値観の変化に抵抗があるのは今では古くなった価値観に浸かってきた高齢者であるというのはもはや仕方のないことであるとも思いますし。

それなのにこの映画で出てくる女性の社会進出に特に理解のある男性というのは高齢者なんですよね。

その点がとても新しいというか、単に新しいものを取り入れようとしてきた昔とは違って、新しい価値観の浸透によって古いものと新しいものが溶け合ってきた現代をうつしだしているように思えました。

きっと私が抱いている”新しい世の中を作りだすのは若者だ!”という考え方も古いんです。

『FacebookもメールもGoogleマップもとても便利』というデジタルの良さを感じる一方で『シャツはインした方が魅力的になることもあるし直接言葉を伝えた方がいい時もある。経験はGoogleに勝る』なんてアナログさが有利になることだってある。

決して今に偏らず、そして昔の教えをただ聞くわけではない。積み重ねてきた良さ(経験)を引き継ぎながら新しいものが生み出されていくのが現代であるのでしょう。

そんな男と女の対等な姿だけではなく、新しいものと古いものが対等に並び合う様を描いてることこそがこの映画のいいところなんだと思うのです。

そして主役の関係性もそう。この映画で描かれている主役の女性とベンの関係は、どちらかが一方に寄り掛かっているわけでも、年寄りと若者という関係でもない。彼らの関係は対等であって、一人の不完全な人間として彼らの友人関係は出来上がっているのだと思うのです。

高齢者が経営者。インターンは若者。そんな構造を取り払った設定からも、古いと新しいの固定概念の壁がなくなってきた現代らしさが描かれているように思えます。

 

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この映画は単に女性の社会進出や現代の女性の生き方を描いた作品ではなく、もはやそんなメッセージの裏にこびりついた「女性はこう生きないといけない」という考えさえも取り払われてきている現代を映し出す作品だと思います。

そして現代が目指す社会とは、新しい変化と積み重ねてきた経験が対等に並び合う社会であり、女も男も”らしさ”という枠組みにとらわれずに生きる世界なのではないでしょうか。

この映画を見てコメディ要素に笑ったり恋愛や仕事に共感しながらも、そうなろうと着実に進んでいる現代の姿を感じることが出来ました。

 

▼あらすじ

ファッションサイトのCEOとして活躍する女性が40歳年上の男性アシスタントとの交流を通して成長していく姿を描いた。ニューヨークに拠点を置く人気 ファッションサイトのCEOを務めるジュールスは、仕事と家庭を両立させながら誰もが羨むような人生を歩んでいた。ところがある日、彼女に人生最大の試練 が訪れる。そんな折、会社の福祉事業で雇われたシニアインターンのベンが、ジュールスのアシスタントに就く。ジュールスは人生の大先輩であるベンから様々 な助言をもらい、次第に心を通わせていく。

 

以下ネタバレあります!

”ベン”はスーパーマンでなんかない!

恐らく見た人の中には、ベンみたいな人間を目指したい!ベンが完璧すぎる!なんてまるでベンを欠点のないスーパーマンみたいに捉える人もいると思います。

しかしながらベンも人間です。何も欠点のない人間なんていません。つまりベンが生まれてからずっと徳のある紳士であったわけではないし、突然高齢者になって変化したわけでもない。

なので私はベンという男性が謙虚で人に気を配れて笑顔を欠かさず判断力もあって、女性の涙を拭くためにハンカチを持ち歩くほどの立派な人間になるまでの人生をどうしても想像してしまうのです。そしてベンの人間性を考えた方がこの作品は面白い。そう感じます。

 

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ということでベンについてあれこれ言及してるレビューはあまり見かけないので見当違いご苦労様状態になるかもしれませんが、ベンのそれまでの人生を作中に出てきた台詞やデニーロの演技をヒントに憶測をしてみます。

まず誰もが尊敬したいベンの良さはどういうところかまとまると・・・

・謙虚

・気配りが出来る

・笑顔を忘れない

・礼儀正しい

・仕事が出来る

・ハンカチを持ってる

・何でも頼れる

という感じでしょうか。誰もが好きになるTHE紳士ですね。

 

彼は劇中そんな姿を崩さずにアン・ハサウェイ演じるジュールズや仕事仲間を幾度となく助けます。しかしある出来事をきっかけに様子が変わるのです。それがジュールズの夫の浮気が発覚した件です。

その件をきっかけにベンはジュールズを気にしてしまい彼女のことを直視できなくなります。彼女が話しかけてた時には血圧を下げる薬を飲み、体調を気遣われるほどに様子が普通ではなくなるのです

そしてベンが自分に何か言いたげな様子に気づいたジュールズは彼に何が言いたいのか聞きます。その時彼は「自分は神経質だ」と伝えるのです。そう、神経質な性格こそベンの本来の姿。よくよく思えば、ネクタイをクローゼットにあんな綺麗に入れている時点でかなりの几帳面な人間なことが伺えます。

神経質であるということはつまりジュールズとベンはその点ではとても良く似た人間であるということではないでしょうか。

何が言いたいかというと、冒頭で自らが言ったように仕事人間でありジュールズと似たような人間であるならばベンがジュールズのようにパートナーに浮気をされた経験がある可能性が高いのでは?と思うのです。

さらに神経質なベンはジュールズと浮気の件について話しますが、この時ベンはジュールズがやり直すことが出来るかという問いに対して「それは難しいだろう」という風に応えます。

つまり「それは難しいだろう」という答えが彼の経験から導いたものであるとするならば、ベンは先立たれた奥さんとに浮気されたことがあり尚且つ完全には修復することが出来なかったということではないでしょうか。

ジュールズとベンがベッドの上で会話をしているシーンの最後。ベンがテレビに映し出される愛の言葉を交わしあう男女の姿を見て涙を流す理由は、単に奥さんのことを思い出しただけではなく、そんな過去を複雑な気持ちで思い出したのだと私は思います。

戻りますが、もし本当にベンが浮気をされていたならば考えられる原因ってジュールズと似ていて仕事人間であったことではないかと予想します。仕事と家庭の両立。それが上手くできずジュールズのようにパートナーとの関わりが希薄になってしまったことが相手の浮気をもたらしてしまった。そんなように考えます。

だから今では立派な人間であるベンではあるものの、何の汚点のない人生を歩んできたかというと決してそうではないのだと思うのです。

そして彼は結局ジュールズの出した結論のように「君は会社を必要だし、会社も君を必要としている。だから夫の浮気でやりたいことを手放す必要はない」と彼女に伝えます。もし仮にベンがジュールズと同じような経験を踏んでいたのであれば、彼は自分とジュールズを重ねたでしょう。そして一晩中彼女のために考えた。

仮に浮気をされたことがあり尚且つそのために家庭と関わる時間を増やしたなら、彼の答えにはもっと好きなように仕事がしたかったという後悔があると思います。そして反対に仕事を選んだのならば、その言葉の裏には自分自身本当はもっと家庭に関わっていれば良かったという後悔(奥さんの負担を減らせば早く死ぬことはなかったのではないか・・・)に加え、ジュールズの頑張る姿を見て(自分は別にしても)やはりやりたいことはするべきだという複雑な思いがあると思います。

どちらかわかりませんが、子供が息子一人なところと奥さんが先立ったところから、家庭との関わりが増えたとは思えませんし、一晩中悩んだということからも後者であると思います。完全に憶測ですし、そもそも浮気されたことなんてないかもしれないけどね←

 

まあ浮気をされた経験があったかはハッキリとはわかりませんが、ベンは年を重ね良くも悪くも様々な経験をしてきた。それは人間ですから確実でしょう。どんな経験があったかわからなくても、彼の紳士的な振る舞いの裏にあるものを想像することでまた少しベンという人間性の魅力が深まるように感じます。

 

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最後に

性別も年齢も関係ない。今はそんな枠組みにとらわれずに一人の人間が対等に自分らしく生き生きと暮らす時代なのでしょう。そしてその生き方に正解なんてない。この映画を見て共感することも多かったと同時に前向きな気持ちになれたと思います。

アン・ハサウェイロバート・デニーロのまた新たな代表作になったことは間違いないでしょう。