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映画に飲み込まれた迷い主

『小野寺の弟・小野寺の姉』感想”不器用な思いやりに触れて溢れ出る幸福感!!”

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映画『小野寺の弟・小野寺の姉』を見た感想をネタバレなしで書いています。

素朴さをベースに声を上げて笑えて、心あったまる素晴らしい映画でした!!!!

リリース情報

日本公開日:2014年10月25日

映画『小野寺の弟・小野寺の姉』公式サイト

簡易感想

私的好き度:★★★★★

笑える:★★★★★

泣ける:★☆☆☆☆

スカッとする:☆☆☆☆☆

ドキドキする:☆☆☆☆☆

心があったまる:★★★☆☆

怖い:☆☆☆☆☆

 

映画感想

不器用な思いやりに溢れたハートフルコメディ!

この映画は,弟の進が姉に殺意を覚えたのはいつだったかを思い出すところから始まります。

その後、自然な流れでお互いの紹介をする二人。

「小野寺より子40歳。数十年髪型を変えない女」

「小野寺進33歳。えー・・・特に浮かばない」

こんな個性溢れてる出だしで、小野寺の姉と弟の独特な人間性と関係性がわかり、一気に”小野寺ワールド”に引き込まれました。完璧な掴みです。

 

小野寺より子と進は早くに両親をなくしてからというもの、兄弟二人で生きています。

昔付き合っていた彼女と別れた過去をいまだに引きずっている”進”。

そして一方、見た目のコンプレックスからなかなか恋愛が出来ずにいる”より子”。

そんな不器用な二人のもとにある日誤って届いた手紙。それを本来の宛先に届けようとしたことで、進の恋が始まります。また、より子は職場でひそかに恋心を向けていた人に相談事を持ちかけられ・・・

このようなストーリーで二人の恋愛模様、そして兄弟愛を描き、素朴さをベースに置いたハートフルでコミカルな映画でした。

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この作品は特に大きなことだったり派手なことは起きません。ただひたすらに素朴。

しかし、素朴というベースへの飾りつけのセンスに秀でていて映像、台詞、登場人物が着る服装だったりという要素にいちいち惹きつけられます。

 

そもそも、キャスティングがいい。向井理片桐はいりが兄弟という設定からして面白い。なんかこう、見た目のことに関わらず、「そうきたか」と意外性があるけどどこかしっくりくるキャスティングだと思うのです。

向井理片桐はいりが並ぶポスターから漂う良さげなセンスに惹かれ、この映画を見ようと思ったというのは過言ではありません。

 

メインで描かれているのは、兄弟の日常。それぞれの恋愛模様は核となってはおらず、日常的に兄弟が互いの人生を尊重しながらも、依存関係に近い形でお互いのことを一番に思いやっている姿が主に描かれています。

普通の兄弟の距離感としてはあまりに近すぎるのかもしれない。しかし、早くに両親を亡くした小野寺兄弟は、それなりに離れられない理由があるんですね。それは思いやりから生まれるものでした。

 

この映画は”思いやることの難しさ”が描かれています。

相手を思いやって行ったことが、本当の思いやりではないかもしれない。それが一貫として描かれているのです。

確かに、思いやって行った行為は相手にためになるかを確認をとってした行動ではなく、相手のためになるだろうとただ想像して行った行為です。だから間違いもある。思いやった結果、相手が本当に求めていないことをしてしまうことだってあるのです。

けれども、正解でも不正解でも思いやるということそれ自体がとても優しさに溢れた素敵な行為であると小野寺兄弟を見て思いました。

つまり、この映画は思いやるという行為の難しさを描きつつも、その根底にある優しさを描いた作品であるのです。

 

小野寺兄弟は不器用すぎてどうしても相手のことを考えてしまうのに、ストレートに思いは伝えられない。考えすぎるから自分の思いを隠していまう。不器用とは優しさから生まれるものであるのかもしれません。

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コンプレックス、トラウマ、生きていると上手くいかないことは多くあるけれども、そんな見えない優しさに満ち溢れている日常が愛おしく感じられるようになる映画だと思いました。

 

邦画ならではの素朴な笑いが冴えわたってる!

予想していたのは、クスッとした笑いですがいい意味で全然そうじゃありませんでした。出だしの片桐はいりがスキップするシーンから吹き出し、声を上げて笑うことになるとはw

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こけしのような見た目で、おかしな笑い方をする片桐はいり

「ありがとうの香り」ばかりを連呼する大森南明

めちゃくちゃ謙虚な及川光博

主演だけではなく、脇もセンスあふれるキャスティングでニヤニヤしますw

そして日常でクスってしまうような笑いを逃さず入れ込んだのがこの映画です。例えば中学生の時に先生がカルボナーラを間違えてボラギノールと言ったことだったり、電話で「お耳が少し多いようで」を「お電話が少し遠いようで」と慌てて言い直しているおじさんを見かけたことだったり、多分その場にいたら面白いんだろうな、ということが兄弟の回想に出てきたりします。

まあ、その回想自体が面白いというよりも、それを思い出して「クスッと」笑ってしまう小野寺兄弟が面白いんですけどね。

っでそんな独特な感性をお持ちの兄弟の不器用すぎる恋愛模様だったり、彼らのやり取りはもちろん笑えるわけで。

突然始まる、”横文字言っちゃだめゲーム”とか仲良すぎるけど素朴すぎて最高ですwww

その他、ウケを狙ったシーンがまんべんなくちりばめられていて、これが邦画コメディの良さだよな、と恐らく日本人にしかわからない笑いの感性に笑いが止まらないのです。

ちなみに邦画で素朴な笑いがあって好きなのは堺雅人主演の『ジャージの二人』という映画。「なんか、こう・・・」という台詞が連発するめっちゃシュールな私のお気に入り作品です。

 

 最後に

小野寺の弟・小野寺の姉』はキングオブ不器用な人間模様、そして兄弟愛、恋愛など、日常の素朴さにフォーカスし、そこに転がっている大切なものや面白味を拾い上げ凝縮した映画でした。

小野寺兄弟の思いやりはどこから生まれるものなのか、どんなコンプレックスを抱え何に悩んでいるのか。ストーリーが進むにつれわかっていく彼らの不器用さと優しさに触れることで、自分自身の日常にある優しさに目を向けられ、「ああ、幸せなんだな」と思える映画なのだと思います。

 

 

 ▼huluで現在配信中!(2015年9月4日)