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映画に飲み込まれた迷い主

『ピエロがお前を嘲笑う』感想”期待しすぎて拍子抜け”

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映画『ピエロがお前を嘲笑う』を見た感想をネタバレなしで書いています。どんでん返し映画として話題になっている映画ですが、やっぱり期待するって良くないと実感・・・。

リリース情報

日本公開日:2015年9月12日

簡易感想

私的好き度:★★☆☆☆

笑える:☆☆☆☆☆

泣ける:☆☆☆☆☆

怖い:★☆☆☆☆

スカッとする:☆☆☆☆☆

ドキドキする:★☆☆☆☆

心があったまる:☆☆☆☆☆

憂鬱になる:★★★☆☆

 

映画感想

”衝撃のラスト”に拍子抜け

どんでん返し映画はもう楽しめないかもしれない。そんなことを観終わった今思っています。というのもこの映画はそんなまさかの予想だにしなかったラストが売りにされている作品なんですけど、はっきり言ってラストの展開を知った時に哀しいことに「なんだかどうでもいいな」と思ってしまいました。

それは事前にラストが凄いんだという感想を目にしすぎたせいであるのは考えなくてもわかります。「騙されないように見てたのにラストはまんまと騙されました」なんていうツイートをTwitterで何度か見たことで、「そこまでラストが凄いなら見るしかない」と劇場に足を運んだんですけど、それが大きな間違いでした。

始まってすぐにこれは楽しめないなと気づきました。なぜなら見初めてすぐに頭の中でラストの予想を始めてしまっていたからです。しかも一つだけではなく気づいたら見せられている全てを疑い、「これはミスリードかもしれない」などと製作者の思惑を考えながら、まるでラストの当てっこゲームみたいに映画を見ている自分がいました。

これでは楽しめない・・・

はっと気づいてからは、わざと映像に映し出されているものをありのままに受け入れる純粋な客を装い、あえて何も考えないように見ようとそんなことを意識して見ていましたね。

でもそんな見方をしているものだから素直に楽しめないんですよ。あれこれ考えていまうのも疲れるし、なにより思考が止むくらいにハマれる要素が映画から見いだせなくて、途中から「早く終わらないかな」とばかり考えていました。

そんなこんなで時は過ぎてくれてラストがやってきてくれたんですけど、それがもう全然どうでもよくて・・・。

結果的にいくつか考えた予想はことごとく外れて見てきた感想の通りに私も騙されたんですけど、騙された悔しさも驚きも衝撃も何も感じなくて、ただ「へぇー」って感じ。まさに友達にすごい夢を見たという話をされている時に感じるようなどうでもよさ。

 

多分ラストに対してこんな風に思ってしまったのには大きく二つ原因があると思っていて、一つはまず「全てが覆されるようなラストを期待していた」ということです。

ユージュアル・サスペクツ』とか『スティング』とかはどんでん返し映画として有名ですが、この映画を観終わった時のように、ラストを知って「マジか・・・」と受け入れるのに少し時間のかかるような衝撃を期待していて本作も見ていました。

しかし少なくともこの上記二つのような衝撃のラストではなかったんですよね。これは期待していなくても思ったと思います。冷静にそんな天と地が逆転するようなラストではなかったんです。どんでん返しではあったものの一部がひっくり返っていただけで、全部が覆されていたわけではなかったんですよね。

普通どんでん返し映画って確認用として二回観たい。二度みたらより楽しめるなんて言われますけど、二回確認するまでもないラストだと思います。衝撃のラストは期待してはいけないと思いました。

 

そして二つ目は作品全体に言えることでもあるんですけどそもそも登場人物に誰一人としてハマれなかったということです。ドイツ映画ということもあり良く見る俳優がいなかったことが原因なのでしょうか。サイバー犯罪を行うハッカー集団ってかっこいいイメージがあるんですけど、それが全然なくてですね。ラストに対するどうでもいいという思いはキャラクターへの興味の薄さも原因だったのかなと個人的には思うのです。

 

まあだから「どんでん返し」を期待しなくても、自分の中で高評価にならなかったと思います。けれどもやっぱり過度な期待がなければもっと驚きがあって楽しかった!と思えたのかなと思うと色々後悔が残るわけで・・・。

そんな驚きが奪われることが、出口丈人による『映画映像史』という本にも書かれているので引用します。

・・・内容が分かったうえでなければ料金を払いたくないという気持ちが先立つからである。このような観客は”ムダ”を避けようと、事前に内容を知ろうとする。しかし作品を観ていない受け手に伝え得ることは、その作品の最上の部分とは限らない。また何よりも観客にはおもいがけないものを見る、不意打ちをされるという体験が失われていく・・・

引用:出口丈人『映画映像史』2004年4月1日

”また何よりも観客にはおもいがけないものを見る、不意打ちをされるという体験が失われていく。”

本当これなんですよね。けれどもどんでん返し映画は”どんでん返し”こそが見どころであってそれを売りにするべきであると思うし、そんな見どころに惹かれてわざわざ映画館に人は足を運ぶものだとも思うのです。簡単に映画の評価だったり情報を調べられる現代では尚更そうでしょう。

しかしながら、そのせいで良さが半減してしまう。そんなどんでん返し映画のジレンマを考えると、映画の情報に敏感な映画好きはどんでん返し映画を純粋に楽しめないんだろうなと少し憂鬱になりますね。

はあ、純粋なあの頃に戻りたい・・・。

 

 

 ▼あらすじ

 並外れたコンピューターの才能を持つ青年ベンヤミンは、正体不明のハッカー集団「CLAY」からメンバーになるよう誘いを受ける。彼らはやがて危険な陰謀に巻き込まれ、警察からもマフィアからも追われる身となってしまう。

ピエロがお前を嘲笑う : 作品情報 - 映画.com